経緯

Google(グーグル)は21世紀初頭、インターネット検索の広告で独走状態になった。その後、グーグル(Google)は雑誌、新聞、ラジオ向け広告仲介も始めた。主要メディアすべてに広告配信できる体制を整えた。そのうえで、テレビ広告仲介サービスに参入した。

第一弾は衛星放送

グーグルは第一弾として、米エコスター・コミュニケーションズと提携した。エコスター・コミュニケーションズ傘下の衛星放送サービス「ディッシュ・ネットワーク」の一部広告枠をネット広告の既存顧客に販売した。競売方式で行った。

ディッシュは全米1300万件以上の加入者に対して、125のチャンネルを放送する。米衛星放送2位だ。

検索キーワード(単語)は競売

グーグル(Google)のネット広告事業の強みは、利用者が検索の際などに入力する単語に関連する広告を配信する「検索連動型広告」。

検索キーワード(単語)は競売にかけられ、より高い広告料を提示した企業の広告が目立つように表示される。

番組の広告枠が競売対象

テレビ向けでは番組の広告枠が競売対象となる。

グーグル(Google)が抱える無数の広告主がチャンネル名や放送地域、放送時間などの条件を指定する。それによって、希望する広告単価を入札する。

グーグル(Google)は、広告が視聴された回数を計測する。計測する道具として、衛星放送の受信に必要なセット・トップ・ボックスを使う。視聴回数に応じて広告主から料金を受け取る。

広告効果を測定できる仕組みもネット広告とほぼ同じ。例えば、広告放送中にどの程度の視聴者がチャンネルを切り替えたかなどを測定する。

番組の視聴率

ネット検索広告業界でヤフーやマイクロソフトなど大手を突き放した。独走状態を固める無敵の事業モデルを武器に、広告で最大の市場規模を誇るメディア業界の「本丸」であるテレビを攻略する狙いだった。

ただ、グーグル(Google)の新システムはテレビ業界などが長年培ってきた商慣行に反する側面もあった。テレビや雑誌など既存メディアの広告価値は、番組の視聴率や媒体の読者数などが大前提だった。広告業界では、グーグル(Google)のシステムで広告そのものの詳細な視聴動向や効果などが明らかになれば、従来の値付けの仕組みが崩れかねない。

広告代理店と競合

さらに、メディア業界と関係が深い既存の広告代理店と競合した。グーグル(Google)はテレビ向け広告システムを「広告代理店にも活用してもらう」と強調する。しかし、テレビ向け広告システムを使えば広告主は競売から広告出稿までの手続きを全自動でこなせる。広告主とメディアの直取引が増えれば、広告代理店の手取りがグーグル(Google)などに流れることになる。

競売による広告料が、既存の手法で決められる広告料を上回るかにも疑問符が付いた。エコスターなどの放送局は、グーグル(Google)のシステムと既存手法を併用した。

21世紀初頭以降、グーグル(Google)は驚異的な高成長を続けた。ネット広告が売り上げの99%を占めた。収益源の多角化は経営課題の一つだった。