昭和

1980年代

1982年
宇宙刑事ギャバン(1982年)
宇宙刑事ギャバン

メタルヒーローシリーズの元祖。

「仮面ライダー」「スーパー戦隊」に続く東映特撮の第3の柱として登場。全身メッキの銀色に輝くコンバットスーツは視聴者に強烈なインパクトを与え、後の『ロボコップ』など海外作品にも影響を与えた。

単独ヒーローでありながら、巨大な宇宙船(ドルギラン)や電子星獣ドルといったメカニック演出、さらに異次元空間「マクー空間」でのダイナミックなアクションなど、当時の最新映像技術を駆使。主演の大葉健二によるキレのあるアクションも大きな魅力。

変身時の「蒸着(じょうちゃく)!」という掛け声や、わずか0.05秒で完了するという設定。ナレーションによる解説も当時の子供たちの間で大流行した。

原作なし(東映のオリジナル・キャラクター&オリジナル・ストーリー)

【あらすじ】
宇宙のあらゆる惑星を滅ぼし、略奪を繰り返す宇宙犯罪組織「マクー」。その魔の手がついに地球へと伸びようとしていた。銀河の平和を守る銀河連邦警察は、マクーの地球侵略を阻止するため、一人の若き宇宙刑事・ギャバンを地球に派遣する。

ギャバンは「一条寺烈(いちじょうじ・れつ)」と名乗り、乗馬クラブで働きながら、マクーの陰謀に立ち向かっていく。

しかし、彼にはもう一つ大きな目的があった。それは、かつてマクーに連れ去られた父であり、同じ宇宙刑事でもあったボイサーの行方を捜すこと。父への想いを胸に、ギャバンはコンバットスーツを「蒸着」させ、銀河の星々を揺るがす戦いに身を投じる。


放映期間:1982年3月~1983年2月

放映期間

1982年3月~1983年2月

話数

全44話

放送時間

金曜19時30分~20時

宇宙が舞台

最大の特徴は、物語のスケールが地球一国にとどまらず、広大な宇宙全体に及んでいる点だ。主人公・ギャバン(一条寺烈)は地球人ではなく、銀河連邦警察から派遣されたバード星人(母は地球人)であり、対峙する犯罪組織「マクー」も全銀河を股にかけて略奪を繰り返す強大な勢力として描かれた。それまでの特撮ヒーローの多くが日本国内の局地的な戦いに終始していたのに対し、本作は「地球は狙われている多くの星々の一つにすぎない」というマクロな視点を提示した。主人公が宇宙規模の組織に所属する公務員(刑事)であるという設定も斬新であり、この壮大な世界観が作品の重厚な骨格を支えている。

SF作品

本作が放送を開始した1982年は、映画『スター・ウォーズ』の世界的な大ヒットを受け、空前のSF・スペースオペラブームが巻き起こっていた時期であった。本作はその潮流を日本のテレビ特撮に大胆に取り入れた意欲作だ。宇宙空間を航行する超次元高速機ドルギランの精巧なミニチュアワークや、光学合成を多用したビームエフェクトなど、当時のテレビ番組としては破格の映像技術が投入された。特に、蛍光灯技術を応用して刀身が発光する必殺武器「レーザーブレード」によるアクションは、ライトセーバーの影響を強く受けつつも、独自の殺陣として昇華されており、当時の子供たちを熱狂させた。

「メタル(金属)」の魅力

「メタルヒーローシリーズ」の原点である本作において、最も革命的だったのはヒーローの「質感」だ。それまでの主流だった布やタイツ素材とは一線を画し、ギャバンのコンバットスーツは全身が硬質なFRPで造形され、さらに「真空蒸着」と呼ばれるメッキ加工が施された。この本物の金属さながらのまばゆい銀色の輝きは、動くたびに周囲の光を反射し、圧倒的な未来感と強度の説得力を視聴者に与えた。変身時の「蒸着!」という掛け声や、金属同士がぶつかり合うような重厚な効果音も相まって、このメタリックなビジュアルこそが、特撮ヒーローの新時代を切り拓く最大の武器となったのである。

主人公:一条寺烈(いちじょうじ・れつ)

銀河連邦警察から地球担当として派遣された宇宙刑事。その正体は、かつて宇宙刑事として活躍したバード星人の父・ボイサーと、地球人の母・一条寺民子の間に生まれたハーフである。地球上では「一条寺烈」という名を名乗り、普段は「アバロン乗馬クラブ」で働きながら、宇宙犯罪組織マクーの動向を監視し、その魔の手から地球を守り抜く。

性格は非常に情に厚く、正義感に燃える熱血漢。しかし、単なる勧善懲悪のヒーローに留まらない人間味も持っている。物語の大きな柱となっているのは、行方不明となった父・ボイサーの捜索だ。マクーの手によって連れ去られた父を救いたいという切実な想いが、彼の戦いの原動力となっており、クライマックスにおける父との再会劇はシリーズ屈指の名シーンとして語り継がれている。

主演俳優:大葉健二(おおば・けんじ)

JAC(ジャパン・アクション・クラブ)出身であり、卓越した身体能力に裏打ちされた生身のアクションを見せた。スタントマンに頼らず、変身(蒸着)前であっても敵の戦闘員を相手に華麗で力強い格闘を繰り広げる姿は、視聴者に圧倒的な説得力を与えた。不屈の闘志を感じさせる鋭い眼光と、時折見せる年相応の明るい笑顔のギャップも、一条寺烈というキャラクターの完成度を高める大きなポイントとなっている。

大葉は本作以前にも、スーパー戦隊シリーズ第3作『バトルフィーバーJ』(1979年)にてバトルケニア(曙四郎)役を演じ、野性味あふれる人間性を発揮した。続く『電子戦隊デンジマン』(1980年)でもデンジブルー(青梅大五郎)役を好演。東映特撮ヒーロー界において、まさに「アクションのできる主役」としての地位を不動のものにした。東映の特撮テレビシリーズにおいて、異なる3つの番組で、それぞれ変身するヒーロー(バトルケニア、デンジブルー、ギャバン)としてレギュラーを務めたのは、宮内洋(仮面ライダーV3、青レンジャー、快傑ズバット、ジャッカー電撃隊ビッグワン)に次ぐ快挙といえる。

2003年には、クエンティン・タランティーノ監督からの熱烈なオファーにより米国映画『キル・ビル Vol.1』に出演。実の師匠である大物俳優・千葉真一が演じる服部半蔵の弟子(寿司屋の店員)役として、師弟共演を果たした。

武器や技

レーザーブレード
光子剣。普段はグリップのみの状態で左腰のポケットに収納されており、ギャバンが手をかざすことでエネルギーの刃が形成される。
ギャバン・ダイナミック
レーザーブレードを握って空中高く跳躍し、落下速度とエネルギーを乗せて敵に振りかざす。

脇役:ミミー

宇宙刑事ギャバンの心強いパートナーであり、銀河連邦警察の才女。ギャバンこと一条寺烈と共に地球へ派遣された、銀河連邦警察の女性捜査官だ。単に「守られるヒロイン」に留まらず、独自の特殊能力やメカを駆使して捜査を支援し、ギャバンの窮地を何度も救う。

演じたのは、当時圧倒的な人気を誇った叶和貴子(かのう・わきこ)。都会的で知的な美しさと、SF感あふれる華やかな衣装は、作品に大人の気品と彩りを添えた。

最大の特徴は、「レーザービジョン」と呼ばれる変身能力である。自分の意志でインコ(黄色い小鳥)に姿を変えることが可能で、マクーの秘密基地への潜入捜査や、人間では立ち入れない場所での偵察に威力を発揮した。

彼女は銀河連邦警察の最高責任者であるコム長官の娘という、エリート家系の令嬢でもある。しかし、安住の地であるバード星に留まることを潔しとせず、自ら志願して危険な地球任務に就いた。

劇中で彼女が身につけていたアクセサリー類は、当時の子供たちの間で憧れのアイテムとなった。

メカ:電子星獣ドル

ギャバンの拠点である高速機「ドルギラン」の下部ユニットが分離・変形して登場する巨大メカ。ギャバンの呼び声に応じて飛来する。

最大の魅力は、ギャバンがドルの鼻先に立ち、直立した状態で指示を出しながら戦う場面。敵組織「マクー」が送り出す巨大モンスターを撃破するため、魔空空間へ突入し、ダイナミックな空中戦を展開する。

口から吐き出す強力な火炎放射(ドル・ファイヤー)が必殺技。

ドルの描写には、当時の円谷プロ出身のスタッフらによる精巧なミニチュアワークが駆使された。首や手足が滑らかに動く操演技術は非常に高く、夕焼けの中を優雅に舞うシーンや、宇宙空間を突き進むシーンは今見ても高い完成度を誇る。

敵組織:マクー

マクーは、宇宙の随所で略奪と破壊を繰り返す暗黒の犯罪シンジケートだ。銀河系を支配下に置くべく、地球を次の標的として定めた。 拠点は、異次元の狭間に浮かぶ巨大な要塞「マクー城」。ここから銀河中の犯罪者や怪物を操り、地球の資源や科学技術を奪おうと画策する。
首領:ドン・ホラー
マクーを統べる絶対的な支配者。 巨大な銀色の身体を持ち、玉座に座ったまま動くことはほとんどないが、その眼光と威圧感だけで配下を震撼させる。宇宙全体を「魔空空間」に変え、自身が全宇宙の神として君臨することを目論んでいる。
最大の脅威「魔空空間」
マクーが持つ最も恐ろしい戦術が、特殊な位相空間「魔空空間」の展開だ。ドン・ホラーが咆哮とともに指を鳴らすことで発生し、ギャバンと怪人を異次元へと引きずり込む。

主題歌

オープニング曲「宇宙刑事ギャバン」
特撮の枠を超え、日本のヒーローソングを代表する金字塔として今なお語り継がれている。

ファンキーでソウルフル。力強いブラス(金管楽器)の音色と、疾走感あふれるファンキーなベースラインが特徴。イントロが流れた瞬間に視聴者のテンションを最高潮に引き上げる爆発力を持ち、劇中のアクションシーンでもインストゥルメンタル(歌なし)版が効果的に使用され、大葉健二のキレのある動きをさらに際立たせた。

「若さって何だ?。振り向かないことさ。愛って何だ?。躊躇(ため)らわないことさ」。
それまでの特撮ソングは「技名」「武器」「敵の名前」を連呼するものが多かった。しかし、山川啓介が「若さ」や「愛」という抽象的なテーマを鮮烈に定義したことで、「ヒーローソングは人生哲学を語れる」ということが証明された。自問自答するスタイルも新鮮。
挫折を味わい、過去を悔やむ(振り向く)ことや、リスクを恐れて決断を鈍らせる(ためらう)場面に直面したとき、多くのファンがこの歌詞を思い出した。

・歌唱:串田アキラ(代表作:『キン肉マン Go Fight』『疾風ザブングル』など)
・作曲・編曲:渡辺宙明(代表作:『マジンガーZ』『人造人間キカイダー』など)
・作詞:山川啓介(代表作:『銀河鉄道999』『太陽がくれた季節』など)
エンディング曲「星空のメッセージ」
戦士の休息と孤独、そして深い愛情を歌い上げた名バラードだ。

オープニングが「宇宙刑事」としての公の姿を歌っているのに対し、このエンディングは主人公・一条寺烈の「一人の人間としての心情」に寄り添っている。 激しい戦いを終えた後の静寂、夜空を見上げながら故郷や大切な人を想う切なさが、バラードという形式で見事に表現されている。

ソウルシンガーとしてのルーツを持つ串田アキラのハスキーで温かい、包み込むような歌声も魅力。

・歌唱:串田アキラ
・作曲・編曲:渡辺宙明
・作詞:山川啓介

東映の「気合い」

1980年代初頭、特撮ヒーロー番組は冬の時代を迎えていた。「仮面ライダー」シリーズは休止し、「ウルトラマン」シリーズも休止していた。かろうじて「スーパー戦隊」が続いていたが、子供たちの関心は『機動戦士ガンダム』などのリアルアニメ路線へ移りつつあり、「実写ヒーローはもう古い」という空気が漂っていた。

そこで、SFマインドを前面に押し出した新ジャンルに挑戦することとなる。当時の特撮番組としては異例の大規模予算が組まれ、映像表現において妥協が排除された。
コンバットスーツの革新
従来の布やラバーではなく、最新の電着メッキ技術を使用した「光り輝くシルバー」のスーツを開発。撮影スタッフを映り込ませないライティングなど、撮影の難易度は跳ね上がったが、その視覚的インパクトを優先した。
「魔空空間」で特撮カット量産へ
予算をアクションに集中させるため、背景が歪んだ異次元空間を設定。これにより、物理法則を無視した斬新な特撮カットを量産することに成功した。
映画並みの合成技術
当時の円谷プロ作品に携わっていた精鋭スタッフを招き、精巧なミニチュアワークやレーザーの合成を駆使した。
第1話の高いクオリティ
東映の気合いは、完成した第1話の高いクオリティに集約されている。銀色に輝くギャバンが魔空空間を駆け抜ける姿は、当時の子供たちに「未来がやってきた」と確信させるに十分な衝撃を与えた。

制作チーム

東映はこのプロジェクトに、当時考えうる最高の布陣を揃えた。
脚本・上原正三
宇宙規模の壮大なドラマを描ける筆力の持ち主。
  • 「ウルトラマン」シリーズ
  • 「スーパー戦隊」シリーズ
  • 「ロボコン」シリーズ
  • 「メタルヒーロー」シリーズ
  • アニメ「ゲッターロボ」
  • アニメ「キャプテンハーロック」
メイン監督・小林義明
独自の映像美学を持つ「映像の魔術師」。『Gメン'75』『特捜最前線』などのオープニング演出でも有名。作品に圧倒的なスタイリッシュさを与えた。

視聴率

平均視聴率:14.9%

最高視聴率:18.6%(第24話「ミミーの悪夢か!? 死を呼ぶ赤い幻想」など)

物語が中盤から後半に進むにつれ、人気が加速した。

ギャバンが放送されていた「金曜19時30分」という枠は、裏番組に強力なアニメやバラエティがひしめく激戦区であった。

なお、当時、大半の家庭にはテレビが一台しかなかった。

最大のライバルの一つが、フジテレビで放送されていたアニメ『陽あたり良好!』だ。人気漫画家・あだち充(みつる)の原作をアニメ化した作品。ギャバンと同じ1982年3月に開始された。当時は「あだち充ブーム」の真っ只中であり、中高生を中心に絶大な支持を集めていた。

また、TBSでは『ガチンコ夫婦クイズ』が放送されていた。日本テレビは、動物や自然をテーマにしたドキュメンタリー・バラエティ『ソロモンの印』を放送していた。NHKは長寿番組『自然のアルバム』。

一方、ギャバンにとって最大の強みは、同じテレビ朝日の一つ前の時間帯(19時00分枠)で放送されていた『ドラえもん』の存在だった。当時すでに国民的人気番組であり、20%を超える高視聴率を連発していた。その『ドラえもん』を見終わった子供たちが、そのままチャンネルを変えずに『ギャバン』を視聴してもらえるか。それが勝負の分かれ目だった。

テレビ朝日において、宇宙刑事ギャバンの枠では、直前の1982年2月まで少女アニメ「ハロー!サンディベル」が放送されていた。

「ハロー!サンディベル」平均視聴率:11.4%

「ハロー!サンディベル」最高視聴率:15.7%

「低視聴率」というレベルではないが、かつて同じ枠で放送され、社会現象となった『キャンディ・キャンディ』(平均20%超)から続く東映少女アニメ路線の流れで見ると、右肩下がりの傾向にあった。

『サンディベル』の視聴率が伸び悩む一方で、テレビ朝日の一つ前の時間帯(19時00分枠)で放送されていた『ドラえもん』は、20%を超える高視聴率を維持し、圧倒的な男児・ファミリー層の支持を集めていた。

『ドラえもん』を見ていた子供たちが、19時30分になった瞬間に「少女アニメ(サンディベル)」が始まるため、他局のバラエティやアニメへ流出してしまう現象が起きていた。

の流出を食い止め、『ドラえもん』の視聴者をそのまま引き継ぐために、ターゲットを180度転換して「男児向け特撮」である『ギャバン』を投入するという、ギャンブルに近い戦略が取られた。

この判断は見事に的中した。『サンディベル』で平均11.4%だった枠は、『ギャバン』に代わったことで平均15%近くに跳ね上がった。

海外展開

フランスで大成功
フランスにおいて、フランス語吹替版が放送された。 1983年10月、国営放送の地上波(フランス2/アンテンヌ2)でスタート。 現地でのタイトルは『宇宙刑事イクソール(X-Or)』。「金(Or)」と「未知数(X)」を組み合わせた造語とされる。 当初は特定の子供向け番組の枠外として放送が開始された。その後、1980年代半ばから後半にかけて数回にわたり再放送が繰り返された 。

フランス語版のオープニング主題歌「X-Or」は、人気歌手ジャン=ピエール・サヴェリが歌い、ヒットした。吹き替えキャストには実力派声優が起用され、コンピューター頭脳である宿敵「ドン・ホラー(Lou IBMX 11)」に立ち向かう重厚なドラマを演じた。ポピーやバンダイが発売した玩具も売れた。

フランスの視聴者は、スタントマンを使わず自ら超人的なアクションをこなす主演・大葉健二の姿に驚いた。

映画『ロボコップ』への影響

ギャバンのコンバットスーツのデザインは、ハリウッド映画『ロボコップ』のデザインソースの一つになったと言われている。

監督のポール・バーホーベンらが、ギャバンのメタリックな質感を参考に、ロボコップのビジュアルを構築したという逸話は有名だ。ギャバンの「電着メッキ」という技術が、巡り巡って世界最高峰のSF映画に影響を与えたことになる。

参考:AIレフリー




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